7月15日、なんとか笹井宏之賞の50首を出しました。どうにかこうにか捻り出しての50首で、潤沢にある候補の中からの選抜や削り出しではなかったので、終わったあとの砂漠化がすごく、いまだにカラカラな気がしてます。
それでというわけじゃないけど、なんだか急に小説が読みたくなって恩田陸『スキマワラシ』を本屋で買った。『六番目の小夜子』の秋や『月の裏側』の多聞みたいなキャラクターが、いろんなことに巻き込まれつつ一歩一歩迫っていく姿や展開が無性にクセになるので、今回の主人公の纐纈兄弟もすぐ好きになった。『六番目の小夜子』の時から一貫して人々の間で語られ、紡がれ、場所につき、育って、人格すら帯びていくような物語の不思議さを描いてきた(と思ってます。)恩田陸作品の魅力を久しぶりに堪能しております。
7月17日、第171回芥川賞・直木賞の発表がありましたね。候補になっていた向坂くじらさんを応援していたのですが、惜しくも受賞ならず。でも初小説、初掲載でノミネートは凄すぎる。そして、受賞してないけど行われたAnti-Trenchでの「受賞しなくてもできるスピーチ」すごく良くて、言葉を扱う危うさと、心許なさ、そして自分はどうあるべきかという向坂くじらさんの思いの詰まったスピーチでした。『いなくなくならなくならないで』とタイトルに付けたのも、言葉への懐疑のようであり信頼であり挑戦、そして挑発かもしれない。
7月24日、仕事帰りに、豪徳寺の「七月堂 古書部」さんで開催中の高塚謙太郎さんと峯澤典子さんの「夏の詩」の展示を見てきました。
展示された詩は美しく、天井から吊るされ、空調の穏やかな風を受けてゆっくりと回転してました。詩の横顔を眺めているようで、詩もまたこちらを横顔で眺めているようで、それはまるで良い関係性のようで、とても良かった。どうやら8月に開かれる夏祭りに向けてシフト調整の話し合い中に僕は入店してしまったらしく、それなのに店員のみなさんには親切にしていただき、展示の説明やフリーペーパーの紹介、ドラマ『Silent』の裏話も聞けて嬉しかったです。絶版で手に入りにくい『水版画』の実物も展示されていたので、とにかく全ページめくってこの目に映してきました。本当はもっとゆっくりとしていたかったのですが、事情あってそこそこで。終了までまだ期間もあるし、もう一回行こうかな。
7月27日、中村森『太陽帆船』を読み終えた。勧められたのがきっかけで、一気に読んでしまった。『太陽帆船』というタイトルは「太陽」が明るい印象を与えるのだけど、宇宙へ行って戻って来ない太陽帆船のことが思い浮かんで、少し寂しいタイトルかなとも思いました。
冒頭の、この歌集を代表する一首〈帆を揚げる 会いたい人に会いに行くそれはほとんど生きる決意だ〉と深くつながるタイトルであるならばなおさら。会いたい人に会いに行くことが、何光年もかかる途方もない道のりであるかのように。
そして明日は歌会。準備をしないと。詠草も徐々に集まってきています。
6月30日に父が入院し、抱えている病気が、もうどうにもならないということで、いろんなことをやらなければならず慌ただしく過ごしております。まいったなぁ、こんな真夏に。動きやすい冬だったら、もっといろんなことしてあげられるのになぁ。もっと、会社帰りに病院に寄ったりしてやれるのに、毎日暑くて、体力がもたない。七月がもうすぐ終わる。八月には退院「できる」のではなく、退院「しなきゃ」いけない。大変だ。でも、なんとかするから全部任せろと思ってやっている。